ギ酸(劇物)

CH2O2

ギ酸というとアリを思い浮かべる人が多いが、すべてのアリがギ酸を持つわけではない。ハチの仲間であるアリは、ほとんどの種で尾端に毒針を持っており、これで巣の防衛や獲物の攻撃を行う。しかし、ヤマアリ亜科とカタアリ亜科のアリの場合はこの毒針を失っており、水鉄砲のように毒性のある毒液を外敵に吹きかけて巣を防衛したり、獲物を狩ったりする。ヤマアリ亜科の場合にはこの毒液の主成分がギ酸であり、ギ酸の腐食性と浸透性によって外敵の皮膚を損傷し、毒液を体内に浸透させる。北半球の温帯地方、特にその北部で特に繁栄していてヒトの生活圏で個体数も多いヤマアリ属 Formica spp. やケアリ属 Lasius spp. のアリがヤマアリ亜科に属すため、この地域でアリの巣を刺激した時にギ酸による攻撃を受けることが多い。

ギ酸はヤマアリ亜科のアリから防御液を吹きかけられたり、イラクサの棘に刺されたときの刺激の一因となっている(ただし、イラクサの毒作用はヒスタミンアセチルコリンが主成分とする説が有力になってきている)。

メタノールを誤飲すると失明・死亡するが(メタノール飲用毒性(中毒))それはメタノールの酸化により生じるホルムアルデヒドのせいだけではなく、それがさらに酸化されて生じるギ酸が、ミトコンドリアの電子伝達系に関わるシトクロムオキシダーゼを阻害するために視神経毒性が現れるとする意見もある。

ギ酸は、10-ホルミルテトラヒドロ葉酸合成酵素によりテトラヒドロ葉酸から10-ホルミルテトラヒドロ葉酸を経て代謝、分解される。ヒトではこの反応速度が遅いためギ酸が残留して毒性を示すこととなる。

液体のギ酸溶液や蒸気は皮膚や目に対して有害である。特に目に対して回復不能な障害を与えてしまう場合がある。吸入すると肺水腫などの障害を与えることがある。ギ酸の蒸気中には一酸化炭素も含まれていることが多いため、大量のギ酸の蒸気を扱う際には注意しなければならない。

慢性的な暴露により肝臓や腎臓に悪影響を及ぼすと考えられている。またアレルギー源としての可能性も考えられている。

動物実験により変異原性が確認されていたが、変異原性はギ酸のみに見られ、ギ酸ナトリウムなどの塩には見られないことから、変異原性はその低いpHによるものだと考えられている。

中・長期毒性
・ラットに8、10、90、160、360 mg/kg/day を2~27 週間飲水投与した結果、360 mg/kg/day を9
週間投与した群及び160 mg/kg/day を17 週間投与した群で体重増加の抑制、摂餌量の減少が著明であったが、用量が160 mg/kg/day 以下で、投与期間が15 週間以下の場合は体重への影響はみられなかった。
・ラットに本物質のCa 塩を0.2%の濃度で3 年以上、5 世代にわたり飲水投与(150~200mg/kg/day)した試験及び0.4%の濃度で2 年間(2 世代)飲水投与(300~400 mg/kg/day)した試験では、死亡、体重や種々の臓器への投与に関連した影響はなかった。また、ラットに本物質のNa 塩を1%の濃度で1.5 年間飲水投与(約730 mg/kg/day)した試験でも、死亡や毒性影響はなかった。
・イヌに0.5 g/day を混餌投与(期間不明)した結果、影響はみられなかったとの報告がある。
・ラット及びマウスに0、58、118、235、470、940 mg/m3 を2 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入
させた結果、940 mg/m3 群のラットで4/10 匹、マウスで10/10 匹が死亡し、470 mg/m3 群のマ
ウス1/10 匹が瀕死となり、屠殺された。ラット、マウスの118 mg/m3 以上の群で鼻腔の呼吸
上皮、嗅上皮の変性(扁平上皮化生、炎症、壊死)の用量に依存した重症化と発生率増加、470 mg/m3 以上の群では鼻の分泌物、活動低下、努力性呼吸、940 mg/m3 群で角膜混濁がみられ、ラットの470 mg/m3 以上の群、マウスの470 mg/m3 群で体重増加の有意な抑制を認めた。
また、ラットでは940 mg/m3 群で、喉頭の扁平上皮化生、炎症がみられ、胸腺の絶対及び相対重量の減少、腎臓及び心臓の相対重量の減少に有意差を認めた。マウスでは118 mg/m3 以上の群で腎臓相対重量の増加、470 mg/m3 群で胸腺の絶対及び相対重量の減少、肺相対重量の増加、940 mg/m3 群で喉頭咽頭の扁平上皮化生、炎症、壊死がみられた。この結果から、ラット及びマウスのNOAEL は58 mg/m3(ばく露状況で補正:10 mg/m3)であった。
・ラットに0、15、30、60、120、240 mg/m3 を13 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、
15 mg/m3 以上の群で血液濃縮と関連したヘモグロビン、赤血球数、血清アルブミンの増加がみられ、肝臓絶対重量の増加、肺の絶対及び相対重量の減少に有意差を認め、60 mg/m3 以上の群では肝臓相対重量の増加にも有意差を認め、240 mg/m3 群で鼻腔の呼吸上皮、嗅上皮の変性の発生率増加がみられた。なお、肺重量の減少については、対照群の19/20 匹で肺に炎症が起こり、肺重量がわずかに増加したこととの関連が指摘されている。この結果から、LOAEL は15 mg/m3(ばく露状況で補正:2.7 mg/m3)であった。
・マウスに0、15、30、60、120、240 mg/m3 を13 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入させた結果、
60 mg/m3 以上の群で肝臓及び腎臓の相対重量の増加、120 mg/m3 以上の群で体重増加の抑制に有意差を認め、120 mg/m3 以上の群で鼻腔の嗅上皮の軽微な変性、240 mg/m3 群で2/10 匹の死亡がみられた。この結果から、NOAEL は30 mg/m3(ばく露状況で補正:5.4 mg/m3)であっ
た。

生 殖 ・発生 毒 性
・マウスに0、750 mg/kg の本物質のNa 塩を妊娠8 日目に強制経口投与し、妊娠10 日目と18
日目に胎仔の神経管欠損について調べた結果、発生率の増加はなかった。なお、母マウス
への影響は報告されていない。
・ラットに本物質のCa 塩を0.2%の濃度で3 年以上、5 世代にわたり飲水投与(150~200
mg/kg/day)した試験及び0.4%の濃度で2 年間(2 世代)飲水投与(300~400 mg/kg/day)し
た試験の結果、出生仔の体重や体長に影響はなかった。
・ラット及びマウスに0、58、118、235、470、940 mg/m3 を2 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入
させた結果、精巣重量への影響はなかった。
・ラット及びマウスに0、15、30、60、120、240 mg/m3 を13 週間(6 時間/日、5 日/週)吸入さ
せ、0、15、60、240 mg/m3 群について生殖への影響を調べた結果、発情周期、精巣及び精巣
上体重量、精子の運動性、精巣及び精巣上体の精子濃度に影響はなかった。

ヒ ト へ の 影 響
・眼、皮膚、気道に対して非常に腐食性が強く、経口摂取でも腐食性を示す。蒸気を吸入する
と、肺水腫を起こすことがある。眼に付くと痛み、発赤、重度の熱傷、かすみ眼、皮膚に付くと痛み、水疱、重度の熱傷、経口摂取では咽頭痛、灼熱感、腹痛、胃痙攣、嘔吐、下痢、吸入すると咽頭痛、咳、灼熱感、息切れ、息苦しさ、意識喪失を生じる。エネルギー代謝影響を与え、アシドーシスを生じることがある。ショックの結果、急性腎不全や呼吸器不全を続発して死亡することがある。慢性中毒では蛋白尿、血尿が認められる。
・腎臓病の患者に2~4 g/day の本物質のNa 塩を投与した結果、毒性影響はみられず、治療目的で2~4 g/day を数ヵ月間投与しても悪影響はなかったとの報告がある。
・10 g 未満の本物質を飲んだ子供では、口腔咽頭の表面に熱傷を生じたが、回復した。成人では、50 g 超を飲んだ場合は通常、致命的で、より少量を飲んだときに生じる口腔咽頭の熱傷、
吐血、肝毒性、胃腸管の潰瘍と穿孔を伴う。
・まぐさ作りの際に、時間荷重平均(8 時間)で7.3±2.2 mg/m3 の本物質にばく露した12 人の農夫(38±14 才)で、ばく露後30 時間の尿中の本物質、カルシウム、アンモニアの濃度が有意に高く、尿中のカルシウム、アンモニアの濃度の上昇は、尿細管細胞の酸化代謝に本物質が作用したことによる可能性が考えられた。


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