シアン

毒性評価

1996年のWHOガイドラインでは、24週間のミニブタの試験(Jackson,1988)で得られたLOAEL:1.2mg/kg/dayをもとにTDIを設定しているが、この試験はLOAELしか求められていなく、一群あたりの動物数も3匹(雌雄含めて)しか使用していないうえに、用量毎に不均等な雌雄の動物数を使用している他、観察されたエンドポイント(行動変化と甲状腺ホルモンレベル)は異なる傾向が認められるなど、TDIの算定に使用するには不適切であると考えられた。
F344ラット(1群1性あたり10匹)が飲水中の0、0.003、0.01、0.03、0.10、0.30 g/L濃度のシアン化ナトリウム(雄では、シアン0、0.16、0.48、1.4、4.5、12.5 mg/kg/dayに、雌では0、0.16、0.53、1.7、4.9、12.5 mg/kg/dayに相当)を13週間飲水投与された。死亡率、体重、毒性の臨床的徴候において処置関連影響は見られなかった。尿のチオシアン酸塩濃度が、シアン1.4mg/kg/day以上で全動物において増加した。組織病理学的影響は、チオシアン酸塩の毒性の標的として知られる脳・甲状腺において見られなかった。最高投与群で、精巣上体および精巣重量と精子細胞数の用量依存的減少が有意に認められている。高用量2群で雌の発情周期が変わったが、この影響は処置関連ではないと示唆された(NTP, 1993)。この研究のNOAELは、雄に対する影響に基づきシアン4.5 mg/kg/dayであると考えられる。
塩化シアンの変異原性、遺伝毒性および発がん性に関するデータは報告されていない。そのため、米国EPAでは発がん性リスクアセスメントガイドラインに基づいて、ヒト発がん性に関して分類できない(GroupD)、あるいは発がん性を評価するには不適切であるとしている。
NTP(1993)の試験のシアンとしてのNOAELを用いて、種間および個体差のUF:100とデータベースの不足に基づくUF:10から総合UF:1000を適用して、シアンに対するTDIは4.5μg/kg/dayと求められる。データベースの不足には、亜慢性試験からの外挿、標準的な生殖試験の欠除、感受性の高い甲状腺への影響の不適切な測定データ、シアンの代謝物としてチオシアンが知られていることを含んでいる。飲料水に対する寄与率を10%、体重50kgのヒトが1日2L飲むと仮定して、シアンの評価値は0.01mg/lと求められる。

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