ヒ素

分子式As
分子量74.9

ヒトにおけるヒ素化合物の急性毒性の強さは、アルシン>亜ヒ酸塩>ヒ酸塩>有機ヒ素の順である。ヒ素化合物の致死量は、1.5mg/kg BW(酸化ヒ素)~500mg/kg BW(DMAA)である。急性の中毒症状は、腹痛・嘔吐・下痢・四肢および筋肉痛・発赤を伴う皮膚の脆弱化にはじまり、四肢のしびれ感・刺痛、筋肉の痙攣、丘疹状の紅斑性皮疹が2週間後に表れる。さらに四肢の感覚異常、角化症、手爪のミーズ線、運動・感覚反応の不調が1カ月であらわれる。台湾・チリ・米国・メキシコ・カナダで、ヒ素汚染井戸水の摂取による慢性のヒ素中毒症が報告されている。慢性中毒症状としては、皮膚の異常・末梢性神経症・皮膚がん・末梢の循環不
全などがこれらの地域で報告されている(IPCS、2001)。
無機ヒ素化合物は、ヒトにおける発がん性の十分な証拠と動物における発がん性の限られた知見に基づき、IARCによってGroup 1 (ヒトへの発がん性) に分類されている(IPCS、1987)。
体内がんと皮膚がんの両方と飲料水中ヒ素消費量との関係についてのかなりのデータベースがあるが、実際の低濃度リスクについては考慮すべき不確実さが残っている。
平成4年の専門委員会及びWHOのGDWQ第2版(WHO, 1996)では、各種疫学調査などを総合的に判断して暫定指針値:0.01mg/Lを提案している。この値は、JECFA(1983)の暫定最大耐容1日摂取量(PMTDI):2μg/kg、JECFA(1989)で暫定耐容1週摂取量(PTWI):15μg/kgを基にし、飲料水に対する寄与率を20%としたときに算出される値に一致するが、低用量外挿モデルによる10-5発がんリスクはこれより低い値を導き出す。
疫学調査では、食物中のヒ素の寄与についての不確実さもあり、食物からのより多い無機ヒ素摂取が水のより低いリスク推定値を導きだすと共に、ヒ素代謝変異や栄養状態などの要因もリスク推定値に影響を与えると考えられる。このような多様なヒ素摂取を考慮した発がんリスク推定は過大評価となる可能性もある。また、最近のNRC (2001)での評価では「入手可能なヒ素の毒性発現機序データからは、線形または非線形外挿を用いるための生物学的な根拠が得られない」と判断している。

 

 

 

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